調律とは音律を合わせる作業です。
平均律で出来うる限り高い精度で調律することにより、あらゆる調性で綺麗なハーモニーを奏でることが可能になります。
長年調律をしていないピアノや、乾燥・湿気の影響を大きく受け、大きく基準ピッチ(中央A=440~442Hz)から外れたピアノは、二度、三度と調律しなければ安定しません。
精密機械でもあるピアノは、正しい調整が出来ていてこそ、その本来の音を出すことができます。
例えば鍵盤の沈む深さだったり、弦をハンマーフェルトが叩く距離だったりと、それぞれ基準寸法というものがあり、それらが狂っていると、ピアノを弾きにくく満足に音も出ていない状態となってしまいます。
実際、年一回の定期調律を行っているピアノでも、これらの調整や後述の整音(音質調整)が十分に行われているものは少ないです。
これは整調や整音には調律より多くの手間と時間を要するため、定期調律の際にはあまり手を入れられないというのが実情です。
きちんと整調されたピアノは驚くほど弾きやすくなります。トリルやトレモロが弾きにくい、鍵盤が重い(軽い)などの悩みがあれば、整調で解消するかもしれません。
音色が気に入らなかったら、楽しくピアノを弾けませんよね。
整音とは文字通り、音質を整える作業です。弾きこんで硬くなってしまった音や湿気等によりこもってしまった音をハンマーフェルトを削ったり、針を刺したりして音色を整えます。
調律よりその変化が分かり易く、気になる方が多いのも「音質」です。
音質調整をちゃんと行ったピアノは、まるで違うピアノの様に感じるかもしれません。
ピアノの構成部品のほとんどは、フェルトやクロス(フェルトを織ったもの)であり、これらは「消耗品」です。弦ですら例外ではありません。
消耗した部品ではどれだけ整調や整音をしても、弾きやすいタッチや綺麗な音にはなりません。使用だけでなく経年劣化や虫食いによってもこれらのパーツは交換修理が必要になります。
ピアノの本体は100年以上もつと言われており、消耗品を交換していけば親子3代はピアノを使っていけるでしょう。長年放置したボロボロのピアノでも多くの場合は修理が可能です。オーバーホールしたピアノは、また新品同様に長く楽しんでいただけるものと思います。